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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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4月の眩い太陽が燦々と馬車道を照りつける。
第一階層の上空には雲の多い青空が広がり、道行く者達を容赦なく照らす。
真夏の暑さに比べれば穏やかなものではあるが、天候の移り変わりの激しい季節だ。
寒暖差と共に襲い来る日差しはじりじりと肌を焼き、体力を奪う。

日傘を差すどこぞの婦人の横を二頭立ての馬車が通り過ぎた。
完全箱型客室の閉じた扉には「髑髏を抱き祈る乙女」が繊細な筆遣いで描かれている。
古き良きランスブルグ貴族であるアストラット侯爵家の紋章だ。
行き先はカメロット伯爵家本邸。彼らはこれから非常に重要な交渉に行くのだ。

馬車の中では三人の男が沈黙を破ることなく座っていた。
ひとりは現当主である長男アルフレッド、目を瞑ったまま腕組みをしている。
ひとりは出戻ったばかりの三男ルーファウス、眠たげな視線を外へと投げている。
ひとりはルーファウス付きの従者ウィリアム、緊張感と馬車の揺れに顔は青ざめるばかりだ。
蹄が道を叩く音を延々聴きながら、三者はただただ静かに到着を待っていた。
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魔女を倒し、その裏に蠢いていた存在すらも倒し、
この世に平穏が訪れたその後。
エレインは兄夫婦と同じようにランスブルグへと戻ってきていた。

正確な場所は第一階層――カメロット本邸。
為すべきことが終わった今、彼女はあるべき場所へと帰らなければならなかった。
何より、彼女にはひとつ決めなければならないことがある。
それは生涯の伴侶、すなわち彼女の夫となる人物だ。

一度は没落したカメロットの名を再興するためには、それなりの力ある家の支援が必要だ。
エレインの留守を任されていたイアン・アヴァロンはいくつかの家に交渉をし、
彼女の未来の夫……否、カメロット伯爵家に婿入りしてくれる人材を探していた。

亡きティンタジェルの領地を条件に提示したこともだが、
かつてのパーティーでの演説でエレイン自身を気に入った者達もいたようで、
我が子を婿にという良家からの声も少数ながら存在していた。
イアンは彼女の性格等も考慮したうえで彼らから数人の候補者を選び、
数か月をかけて彼女と対面させ、ふるい落としていった。

エレインもそのことは知っていた。重々理解していたつもりだった。
だが実際に選ばれた相手と会っていくにつれて不安ばかりが募っていった。
生まれも育ちも第三階層である彼女からすれば、
婚約者候補の面々は皆本来ならば手も届かないような存在だった相手だ。
そんな相手を前に、後ろめたい気持ちや己を卑下する心が増大する。
結果、彼女は二十歳の誕生日を迎えてなお、婚約者不在のまま。
相手を決めあぐねたまま現在に至るのだった。

積み重なる申し訳なさと己の不甲斐なさに顔色は沈む。
同時に、嫌といいたくなるほど強い願望が彼女を蝕むんでいた。
一度でいい、どうしようもなく会いたい、と。



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彼女の時間はあの日、目の前で彼女が消えた瞬間から動かない。
彼女の心はあの日、救いたかった彼女を失ってから動かない。
石のように、蛹のように。

追いかけて捕まえて、勇気づけようと、そうしても。
頑なに閉ざされたままの扉は開こうとはせずに。
俯いたまま、土を見て、息を漏らして、過去を見て。
どんな言葉も聞き入れず、己のせいだと悲観する。

己を呪っていることが目に見えてわかる。
己を嫌っていることが目に見えてわかる。
今直ぐにでも、あの日に帰ってやり直したいと、
それより前に戻ってやり直したいと願いながら、
戻れないことを知っているからただ悔い続けていることもわかる。
今の彼女は、昔の僕だ。
10年前のぼくと同じだ。


蒼空
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