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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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礼装は嫌いじゃない。
ネクタイを締めることがほとんどないから、タイピンを留めるだけで心が弾む。
袖を通すと自然と背筋も心も真っ直ぐ伸びてしまう。

だが、パーティーは好きじゃない。
様々な理由をこじつけて催してはいるが、
本当の目的は権力の誇示や忠誠心の確認のため。
大体の客人はそれに気づいているし、渋々参加しているやつばかりなもんだ。
世辞と張り付いた笑顔が並ぶあの場所にいるのは気分が悪くなる。

本音をぶちまけると、このままこっそりと抜け出してしまいたい。
彼女と一緒に、幼い日に訪れたあの別荘に行って、
花でも眺めながらゆっくりとした時間を過ごしたい。

だが、「主賓」の親族なのだから出なければならない。
下手をすれば僕自身が主賓として迎えられてたんだから
その辺は我慢しなければならないのは当たり前だ。

(とは言え、あんなことがあった後だからな……)

ため息をひとつ。
女王騎士によるランスブルグ襲撃から2ヵ月が過ぎ、
第三階層はようやく落ち着きを取り戻したが、
戦禍の残滓は未だ人々の心の奥底に蔓延っている。
そこへ追撃をかけるような新事実の洪水だ。
三日月湖で出会った少女の話はエンドブレイカー達に衝撃を与え、
同時に「作られる理不尽な終焉を壊さねばならない」と僕たちに運命づけた。

そんな慌ただしい2か月。
本来ならこのパーティーも延期すべきだったのだが、
一時的ではあるが平穏を取り戻した今のうちに、
また新当主たるエレインをこの地に拘束できる間に開きたいと急かされ、
急遽第三階層にあるアヴァロン邸にて開催が決定した。
考えれば考えるほど間抜けた話だ。
舞台も整わぬままに役者だけ揃えて本番に挑もうとしているようなものなのだから。





そこへ、思考を遮るようにノックが二回。

「失礼致します。アーサーさま。お支度は整っておいででしょうか」

扉の先から深みのある低音が響く。
僕は襟元を整え、鏡越しに扉を見て「ああ、間も無く終わる」と一言。
ついでに入室を許可すると扉が内側に音もなく開いた。

扉の前にはカーディナルレッドの礼服に身を包む若い男がひとり。
慇懃無礼という言葉を形にして、服を着せたらこんな男になるだろう。
姿勢を正し、手を胸下に一礼すれば、熟練のバトラーを思わせるほど優麗。
この男がかの有名な赤の女傑、レイス・アヴァロンの双子の弟とは誰も思うまい。
そう、容貌や仕草だけならば、そうは思わない。

「ああ、何と――何と麗しい」

僕の脳内評価を知らないであろうその男――イアン・アヴァロンは
顔を上げるなり妙に声を高揚させ、且つ頬を紅潮させて、
それはもう気持ち悪いくらい悦に入った表情で近寄ってくる。

「普段の御召し物も異国情緒溢れて素敵ですが、
 礼装ですと貴族としての品格と支配者としての風格が全身から溢れ出てまた素晴らしい。
 何よりも氷柱の如く突き刺すような眼差し……本日は格別に冷たく心を抉るようで私非常に興奮しt」
「世辞はいいからさっさと用件を言え。そして帰れ」

手を握られそうになるのを回避し、ついでにアイスレイピアを抜く。
気持ち普段より冷気を発しているのは僕の心境のせいだろう。
極力近づきたくない(ついでに触りたくない)僕に対し、
相変わらずガードが堅い……だがそこがいい。
と呟き差し出していた手で口元を隠すイアン。
聞きたくない台詞が聞こえたが敢えて無視しよう。
イアンは僕の心境を知ってか知らずか、一歩半下がり深く頭を下げる。

「ご報告いたします。カリス家のご令嬢マルクト様が先程到着いたしました。
 ドゥムノニア家からは当主代理のユノス様、ご息女のステラ様がお見えになっており、
 他、コーンウォール家やベイドン家など関係者各位も揃いつつあります」

しかし、とイアンは言葉を区切る。

「ドゥムノニア家当主レークス様は先の動乱より消息不明、
 またティンタジェル家の当主バラフィナ様、ご息女のエナ様とそのご家族、
 果てはティンタジェルの関係者は依然音信不通となっております。
 我々も手は尽くしましたが発見できず、襲撃の際に第三階層へ退避できなかった可能性が」
「それだけ解れば十分だ。よくやったと伝えておけ」

イアンの報告に耳を傾けたまま、僕は椅子に座って足を組む。
事前に襲撃時から消息不明の関係者を捜索するようには命じてはいたが、
予想よりも状況は悪化していると考えていいだろう。
特に問題なのがティンタジェル家だ。

娯楽と芸術を愛する彼女達の家は第二階層に拠点を置いている。
現当主バラフィナ・ティンタジェルも元舞台女優であり、
現在は若手育成のためと自ら劇団と育成所を所有しているらしい。
役者の卵たちと多くの街を巡り、実力を磨いてきたとも聞いているが、
以前より動向に不明な点が多く、他分家との接点も限りなく少ない。
(拠点や当主達の名前程度しかわかっていないのもそのためだ)

それだけではない。
本家――もとい祖父であったカークヴァイとの繋がりに怪しまれる部分があり、
また昨年の円卓会議にも当主代理のエナは現れず、その後も行方をくらましている。
更には襲撃により一家と関係者が皆消えている現状。
女王騎士の襲撃だけではない、なにかがあるようにも思えた。

(仕方ない。癪ではあるが、またやつらに頼むとするか)

複数の懸念にひとつの決断をすれば、
椅子に座ったままイアンに視線を合わせ、次の指令を命じる。

「――行方不明の連中については後日再調査、
 今日のところは宴の場を汚さぬよう、警備の強化に勤めてくれ」
「かしこまりました。
 ならば警備は我が師団と姉の『煉獅子』に当たらせましょう。
 エレイン様には私ともう一人、姉直属の部下でオルガという男が就く予定です」
「ああ、オルガ・サグラには先日会った。寡黙で忠誠心の高い男だな。
 彼にはエレインも多少は警戒を解いていたようだった」
「ええ。今も控え室で談笑しておりまして……
 彼と話ができるのは姉以外見たことがなかったので相当驚きました」
「それならばやつは問題ないな。後は開始時刻までに警備を整えてこい」
「はっ、お任せください」

会話が終わればイアンは再度一礼し、部屋を出ていく。
ようやく一息つける、と体の力を抜いて組んだ足を解いた。

(……そう言えば、ポーは着替え終わったかな……)

慌ただしさの中に埋もれていた本来の目的を引き上げると、
今度は無性に彼女のことが気になって気になって仕方がなくなる。

「……ぶたれていいから行くか」

決まると即立ち上がり、部屋を出る。
きっちり締めていたネクタイを少しだけ緩めて、彼女の部屋へと足早に向かった。



※のちのアーサーに関するNEXT。
 可愛い連呼しすぎてポーちゃんに殴られる。
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Comment
こそこそっと ...2013/09/01(Sun)
by ポー Edit
異世界のほうに、ちょこっと書いておきました~
お役に立てたらよいな、とか
こそこそと。 ...2013/09/01(Sun)
by アーサー Edit
見に行った。
というか丸投げられた!?
(そしてアーサーはいつも通りだった)
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