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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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大広場を抜けて、隣村への街道へと出たエレインが最初に感じたのは臭いだった。
爆発があったらしき場所には木屑と人間だったらしきものが散らばり、
噎せ返る様な血と火薬の匂いが未だに澱み、空気が濁っていた。
出来る限り吸わないようにと口元に布を当て、視界を少しばかり先に向ける。

街の明かりから離れた暗がりの街道に、二つの影があった。

一人は緑色のローブを着た、人型。
恐らく体躯から男性であると見て取れるその人影は、どこか煤けている。
先程の爆発に巻き込まれたのか、痛手を受けたのか、呼気も荒く片膝をつき、
されど、鉄仮面越しの視線は敵を固く捉えて離さない。
そして、もう一方だ。




ここで一つ、前置き程度にエレインについての注釈を入れておく。
エレインは、10歳を超えたころからこの町で兄たちの手伝いをしていた。
それこそミミズやカエルのような、年頃の少女が苦手なものも平気で触っていたし、
裏山に毒蛇が出たと騒がれていたときだって平気な顔で山に入って山菜集めをし、
ついでに騒がれてた毒蛇も捕獲して帰ってくるくらいに平気だった。
そんな彼女が敵を見て一番に思ったことは一つだけだった。

 気 持 ち 悪 い 。

とにかく気持ちが悪い、だった。
薄汚い襤褸布を被った頭部に見えるのは3つの目。
どれも別方向を向いていて、しかも忙しなくぎょろぎょろと動き続けている。
腕はカマキリに似た形状。だが刃は鋭く、独特の姿勢で構えられたまま動かない。
そのくせ黒光りする胴体からは無数の触手が生え、ぬらぬらと蠢いている。
そんな、3m級の化け物が目の前にいる。
例え両生類や爬虫類に慣れている人間でさえ吐き気を催すほどのおぞましさだった。
だが問題なのはその怪物の胸元に見える、ブローチのような白い円盤。

(――マスカレイド!?)

そう、あの仮面がへばりついている。
そこまで理解すればあとは冷静に状況を察することができた。
このマスカレイドの存在を知った「彼」が、町の人を逃がし、一人戦っていたのだ。
――彼が忠告してくれたおかげで、そう告げた町長の顔を思い出す。
彼の判断があったからこそ、救われた人たちがいたのだろう。

込み上げる思いから銃を握り直したその時、奇声を上げた化け物が大きく腕を振り上げた。
その刹那、エレインはなにかに引き寄せられるかのように男と鎌の間に割って入り、
緩やかに降り下ろされた鎌を二丁の銃を十字に構えて受け止める。
遅い動作とは裏腹に重い一撃をどうにか眼前で防ぐと、身体を押し上げて鎌腕をかち上げ発砲。
人間で言えば肘であるだろう部位を弾丸が穿ち、鎌腕を一本吹き飛ばした。吹き飛んだ傷口からは腐臭と共に黒く濁った体液が耳障りな音と共に流れ落ちる。
口を押さえ、喉元まで競り上がってきた嫌悪感と胃液を飲み込んで、エレインは男を安否を確認する。

「大丈夫ですか!?お怪我は!?」
「…………」

少女を前にして男は声も発さぬまま彼女を凝視した。
それもそうだ、男の窮地を救ったのは紛れもなく、己の主から監視と保護を言い渡された対象、
カメロット家の次期当主となる娘そのひとだったのだ。
心配そうな彼女の瞳に、エンディングは映らない。
どうやら自分と同じ存在のようだと確信するや否や、
男は無言のまま、窮地を救った少女の軽い身体を腕一本で引き寄せる。
つい先程までエレインが立っていた場所には
銃撃を食らわなかったもう片方の鎌腕が突き刺さっている。
もし彼が自分を引き寄せていなければ、と考えるエレインの背に悪寒が走った。
敵はというと、痛覚がないのか、体液がこぼれ続ける片腕をぐにょりと構え、

くきゃ、け、ひひっ、いひひひひひゃははははは!

濁り切った、笑い声ともとれる音をどこからか発して捻じれた。
異様な行動、姿に耐えきれず、エレインは込み上げる嘔吐感に耐える。

「ぅぅ、気持ち悪い……こんなの見たことない……」

泣きそうになりながらも構えを解かない。
気丈なのか臆病なのか、そんな彼女を横目に男は呟いた。

(ローバーローパー……盗人を狙う、イマージュ……)
「えっ?」

なにか言いました?と首を傾げるエレインをよそに、
呼気の漏れる音と共にフードの男は本来聞こえるはずのない言葉を並べる。

(商人達が産み出した罪人を狙うイマージュ……奴は夜の街道で盗人を狙い、襲う。
 本来ならこれほど巨大でも、人を食らうようなこともないのだが……)
「――成る程、それが棘の影響で凶悪なマスカレイドに……」
(恐らくな……、……む?)

そこで気づく。――会話できている、ということに。
声の発し方を忘れてしまった彼にとって、今漏れている言葉というのは
形を成さず音にならず、ただ漏れ溢れているだけ、のはずなのだ。

(何故、我の言いたいことがわかる?)

それを「口にした」ところで本来なら返ってくる言葉はないのだが――
エレインは不思議そうに男を見返して

「ふぇっ?だ、だってお話ししてくれてますし……」

気が抜けるような声で答えた。
ますますわからない。だが、この少女には自分の言葉が理解できるのだ。
何時ぞや、主が言っていた。
「普段から言葉なき声に耳を傾けてるやつにゃ、お前の声は聞こえるだろうな」
その意味は理解できなかったが、この少女はその「言葉なき声」とやらがわかるのだろうか。
彼女を見つめていると、何かを察した少女がふっと視界から消える。
半瞬、ローバーローパーの触手の一本が彼女のいた地面を強く叩き、
更に半瞬、彼女の双銃が強烈な破裂音と共に魔術の弾丸を吐き出した。
地面で不規則に跳ねた弾丸が胴体に幾重もの銃創を生み出すも、
ごぽり、と不快な音を鳴らして、化物は傷口から新たな触手を生やす。
その様を見てやはり気分が悪そうに口元を押さえる少女の姿を見遣り、男は呟いた。

(強いのか弱いのか、よく解らん娘だな。
 だが、汝は我が主と似ている。その上、終焉を見る力もあるか。面白い)
「あるじ?それに終焉って……」
(我も汝と同じく「エンドブレイカー」とやらと言うことだ)

男は自らに迫りくるローパーの触手を腕を一薙ぎして切り落とす。
手甲から伸びる鈍い輝きが続けて伸ばされた触手をさらに一閃。
最後の一本を遠心力に身を任せてその場で回転、叩き斬ると、
男は静かに、彼女にのみ聞こえるその声で名乗り上げた。

(我はオルガ・サグラ。アマツカグラの忍だ。
 我が力、汝に貸そう。手傷を負った身なれど我を汝の刃と思え)






※敵情報
名前:ローバーローパー
分類:イマージュ

意味は「追いはぎローパー」とかそんな感じ。語感重視で作った名前。
町や村など、人の多く集まるところには現れず、
夜の街道で野盗や追いはぎなどを襲うイマージュ。3m。地味にでかい。
元々は商人たちの間で広まったちょっとした噂話。
「薄汚いローブを纏った化け物が、野盗を食い漁り盗品を奪っていくそうだ」
というもの。野盗に襲われることの多い彼らの願望も詰まっていたようだ。
いつしかそれが人々に伝わり、実際に野盗達の間でも冗談半分に
「夜の街道には気を付けろ、ローバーローバーに食い殺されるぞ」
などと語られるようになったものがマスカレイド化、実体を持った。

イメージはカマキリ+きもいの。上半身カマキリで、下半身がローパー。
薄汚れたローブの下に三角形の頭部を持ち、3つの目玉で獲物を探している。
※獲物を探している間は常に違う方向を向いている。ぎょろぎょろしてる。
獲物を見つけると空中を泳ぐように接近し、両腕の鎌で首を刈り取る。

Q.どうして動物類や植物類じゃなくてイマージュ?
A.これが生物としてどっかに大量発生してたら怖いから。今回だけの登場なので。
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