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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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灯りの少ない石畳の道を少女は走る。

牧場を出て5分、町に入った彼女はどこに向かうべきか把握できていた。
煙の上がっているのはどうやら町の入り口付近――昼に大宴会を行った広場がある方面だ。
まだ宴の片付けをしている人たちがいるかもしれない。
最悪の事態を想定しながらも、短い階段を飛び降り鍛冶屋の前を横切る。

ちょうどその時だった。
影が3つ、果樹園に向かう細道から飛び出してきた。
思わず足を止め、半歩下がると銃を構える。照準の先にいたのは――

「エレインちゃん!」
「フィリップさん!それに、ジェフリーさんにヴァージルくん!?」

名を呼ばれて、彼らの名を呼び返す。
彼女の前に現れたのはこの町の町長を務める老紳士フィリップ、
雑貨屋の主であるジェフリーと、図書館の管理者ヴァージル。
宴の席でも見た町民たちの姿に、エレインは銃口を下げた。
他に人の姿は見えないが、比較的運動の苦手な彼らがここまで逃げてこれたのだ。
きっと大丈夫、とエレインは脳裏で小さく呟いた。
だが、心配して覗き込んだ彼らの瞳には何故かエンディングは見えない。
あれだけの騒ぎがあったにもかかわらず、だ。
ならば心配はいらないのだろうか……複雑な気持ちでエレインは彼らの目を見続ける。
そんな彼女についで声を掛けたのは呼吸を整えていた雑貨屋の主だった。

「はぁ、こ、こんなに走ったのは、ひ、久し振りだよ……
 ふぅ、……しかし、いったい、何がどうなってるんだい?」

ジェフリーは痛む脇腹を押さえ、深呼吸。
余程必死に走ってきたのか、額には脂汗が滲み、息も荒い。
彼に何かを訊ねるのはあまりにも可哀そうだと思ったのか、
エレインは優しく労いの言葉をかけて、他二人から状況を確認する。

「それで、他の皆さんは?無事に避難できてますか?」
「ほかのみんなは先に逃げてもらったんだ。ぼくらが最後だよ。
 でねでね、みんなでお鍋洗ったりしてたら森の方から怪しい男が現れてさ、
 そいつが突然ぼくの腕に書いてきたんだよ。逃げろって」
「怪しい男が……えっ、逃げろ?」

疑問が積み重なる。
怪しい男に襲われて、ならまだしも、「逃げろ」とはなんだろうか。
そもそもこんな時間に森の方からやってくる、ということ自体奇妙だ。
首をかしげて悩むエレインに、町長が情報を追加する。

「緑のローブを着た鉄仮面の男だったよ。このあたりじゃ見たことない人だったね。
 なんかこう……見た目は怪しいけど妙に必死だったんで信じてしまってね。
 私からも町のみんなに逃げるようにお願いしたんだ。
 他の皆が逃げ終わった後に私達も広場を後にして、そのあとあの爆発があったんだ。
 ――彼が忠告してくれたおかげで、私達はあの爆発に巻き込まれずにすんだんだな」

不安に翳る表情にわずかな安堵を見せて、フィリップは息を吐く。
その男がどんな人物なのか、きっと「逃げろ」の理由も説明はされなかったのだろうが、
町長という地位の割に威厳のないこの老紳士は、
町で一番人と情勢を見る目があり、同時に信頼の達人だ。
彼の何かを直感的に見抜き、信頼するに値すると無意識のうちに判断したのだろう。
故に町民たちも男の――正確には町長の言葉を信じて動いたに違いない。
だが同時にエレインは思う。
男は何者なのだろうか。いったい何から「逃げろ」と言いたかったのだろうか。
そもそもなぜ爆発が起きる前に事態を察知したのだろうか。
あの爆発が起きた時、その男はどうなったのだろうか。
重ね続けた疑問の答えは今、どこにあるのか。それだけはエレインにもすぐに理解できた。

「……その人はどっちに?」
「村を出て……ボドミン村へ向かう街道へ出てったはずだよ。
 エレインさんも行くの?さっき変な爆発もあったし危険だよ?」

来た道を指さして答えると、ヴァージルはエレインの瞳を心配そうに覗き込む。
紫を含む蒼の目には強い意志と、輝きが宿っていた。

「私は天誓騎士だもの。危険とわかってても行かないと」

凛々しく微笑むと、エレインは武器を握ったまま
エレインは彼らの来た道を視線で辿ると、町長たちに指示を送る。

「皆さんは家に帰って、家族と一緒にひとつの部屋にいてください。
 何か武器になるものを持って……万が一の時には戦えるように!」

最悪の事態だけは避けようと思いながらも、警戒は怠らない。
不安と焦燥で逸る心を鎮めながら、エレインは走り出した。
この細道を突っ切れば大広場に――そして、現場に最速で着く。

――大丈夫、きっと大丈夫だ。

心の中で呟いたその時、
背後から「気を付けるんだよ」と弱々しい声援が聞こえた。

小さく笑って、彼女は加速した。






オルガにとってそれは不測の事態だった。

不審者に気づいた彼が町民に避難勧告をして、
街道沿いの茂みで息を殺すこと2分、怪しげな集団を発見した。

オルガは知らないが、その集団は隣村を襲いに行った強盗団だった。
だが、何らかの理由により彼らの悪行が知られていたのか、
見知らぬ八人組の冒険者達の襲撃を受けて作戦は失敗。
元は30人近くいた団員も18人にまで減った。
彼らの不運は更に続き、妙に殺気だった同業者が彼らに襲い掛かり、
命からがら逃げ延びたのが今いる7人なのである。
計画失敗から20時間。最早肉体的にも精神的にも困憊し、
「俺、実家帰って真面目に生きるよ」と譫言を呟くものがいるほどだった。
勿論だが、彼らに町を襲うと言う意思はない。
彼らは今宵の寝床を探しているだけだった。

疲れきった彼らが運んでいるのは、先の計画で使う予定だった爆薬だ。
元々彼らはこの爆薬を村に仕掛けて起爆、
爆発に怯える村人たちを他の脅し役の連中が一網打尽にしている間に
爆破役の者たちが金品を奪う算段だったのだが、
今や改心しかけの彼らからすれば無用の長物だ。
とは言え、捨てるのは勿体無いから何処かの街で売り払おうと
今の今まで運び続けていたのだ。
道中で止むを得ず2,3個使用してしまったが、まあ問題はない。
それでも未だ6個は残っている、と男達は話しながら歩いていた。

そう、そんな哀れな彼らの事情などオルガは知らない。
彼らの話す内容に耳も傾けることなく、音もなく背後に忍び寄ると
一閃。
ガントレットに取り付けた剣で一人の首を掻っ切った。
仲間の一人が血飛沫をあげて倒れ込んだことにより敵襲に気付いた彼らは
戦うという選択肢をかなぐり捨てて、一目散に逃げ出そうとした。
背を向けて逃げようとする彼らに違和感を感じながらも、
鉄仮面の騎士は淡々と彼らの後を追う。
一人、また一人と捕まえては急所に的確に刃を突き刺して、
機械的な鋭敏さで哀れな盗賊団の残党を屠っていった。
そして最後の一人――腰が抜けてその場に座り込んで
おびえる男の胸倉を掴んで、首元に刃を突きつける。

「ひ、ひぃいぃぃぃっ!」

悲痛なまでに弱弱しい悲鳴を上げて、男は自分を殺す仮面の殺戮者の姿を見た。



そして不測の事態が訪れる。
今、まさしく殺そうとしている男の瞳に、残酷な終焉が揺らめいていた。
――この後にやって来る凶悪なマスカレイドによる、悲惨な運命がそこに視えた。






※町の人にエンディングが見えなかったのは、マスカレイドが町に行かなかったから。
 ええ、ただのこじつけです。本当に申し訳ございませんでした。
 次回、ようやく戦闘に突入するよ!

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