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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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ドゥムノニアはアヴァロンに次ぐ領地を有するカメロットの分家だ。

元々は権力も弱く、立場も社交性も低い中流貴族だったのだが、
本家崩壊に伴う領地分配の際に先代当主レークスが率先して動き、
田園地帯の多い北の領地を獲得することに成功。

更には長らく研究してきた鶏や麦の品種改良も最終段階を迎え、
自ら現地へ赴き、地質調査や生産者たちから知識を吸収。
同時に代々研究し続けてきた育成法を指導することにより、
領地内の生産率を大幅に上昇させた。
ドゥムノニアは僅か9年で独自の地位を確立したのだった。

その傍ら、彼らはカメロット家の「裏」に深く根付いていた家でもあった。
本家より命が下れば、政治的に対立する者達への洗脳、買収は当たり前。
呪術を用いて精神的に圧力をかけた上で、
言葉巧みにカメロット勢力下へ引き込むこともあれば、
敵勢力の内通者を暴き出すのも彼らの仕事であったと言われている。
本家崩壊以降はそれらの仕事はなくなったものの、
ドゥムノニア家には今でも強力なデモニスタが数名在籍し、
凶悪な「用心棒」達と共に来るべき時に備えているという。


「冠を戴く白き蛇」は今なお水面下で牙を研ぎすましているのだ。


 

ユノス・ドゥムノニアは憔悴していた。
若草の乙女アリッサムの襲撃で上の階層が制圧されたことにより、
第2階層の別宅で療養していた父レークスの消息が未だに追えず、
更には実妹ステラが軟禁されていた部屋から脱走しているらしいという報告、
挙げ句、人前に出ることが嫌いな自分が父の代理として領地の状況把握や
修復に必要な人材の派遣を行わねばならない現状に。
慣れない仕事の数々、休む間もない暴動とそれへの対処、
終わりの見えない現実に嫌気が差し、心身ともに疲れ果てていた。

(とは言っても。各領地の被害確認は次の町で終わり……頑張った。頑張ったよ俺)

監査結果を書類に纏め、部下の一人に必要な人材と建材の確保を依頼したのが一時間前。
よく揺れる馬車の荷台で次の町に向かうまでの長くも短い三時間も、
普段の彼からすれば劣悪極まった環境だが、今の彼にとっては至福の休息時間となっていた。

(次の町に着く頃には……というかもう夜か。食事もまだだし、時間的に仕事は無理だな。よし明日にしよう。とにかく今日はベッドで寝るぞ。足と背中伸ばして寝るんだ……)

他の荷物を背もたれに、丸めたフードをクッション代わりにすると
すぐ傍らで槍を抱えて目を閉じる佳人に声をかける。

「シオン、次の街ついたらすぐ宿とって寝るぞ。お前もしっかり休め」

名を呼ばれ、佳人が薄く瞼を持ち上げる。
長い睫毛の先に雇い主の姿を捉えると気だるげに口を開く。

「さいっこー。つか暑くねこっち?結構風吹くって聞いてたんだが」
「今年は暑いな。なんか湿度たっかいわ。マジふざけんなって感じだ」
「あー、こんなら地元帰っときゃよかった。もう盆も過ぎたぞおい」

ぐったりと天を仰ぐ青年――シオンは胡坐を解いて足を伸ばして組む。
荷台の縁によりかかる彼の額には玉の汗。
長い栗色の髪も綺麗に纏め上げられ、2本の簪が留められている。

「俺としては大助かりだけどな。お前いてくれるおかげで仕事も捗るし」
「てめぇがグズいからだろーがばーか」
「おまっ、仮にも雇い主にバカはないだろバカは」
「莫迦には莫迦っていうのがオレの流儀」

にやりと笑うシオンに歯軋りしながら睨みつけるユノス。
「雇い主」と「用心棒」という関係の二人ではあるが、
かれこれ2年近く共に過ごしたためか、それとも歳の近かったためか、
二人の間には宛ら幼馴染の悪友同士といえるような絆があった。


「そういやよ、次の街ってどんなとこよ」
「あ?あー……ぶどうジュースがうまいな。あと牧場がでけぇ」

短い思考の後、適当な答えを投げたユノスはふと思い返す。
次の街には彼の友人が住んでいる。
父の仕事にはほぼ興味のなかった彼ではあったが領地の視察にだけは強制的に参加させられ、
その視察の中で偶然親しくなったのが、次の街に住む牧場主の兄妹だ。
兄は無口で職人気質、他人の愚痴も静かにただ隣で聞ける静寂に強い男。
妹は逆に明るく誰にでも笑顔を向け、無駄に人懐っこい少女。
他人を嫌い、人付き合いの苦手な自分が多少なれ人というものに慣れたのは
間違いなくあの兄妹のせいだ、とユノスは考えている。

(特に「あいつ」……あの能天気ど天然娘のせいだ)

瞼の上に浮かんできたのは、その「妹」の姿。
記憶をなくし、行き場をなくして、牧場に預けられたのだと聞いたその少女は
その笑顔に暗く翳を落とすこともなく、日々牧場の仕事をこなしていた。
そのくせ人を疑うことを知らないのか、人を疑うことすら忘れたのか、
人見知りする割に、人に慣れると一気に懐いてくるのだ。
裏表のない笑顔を前にすると、無下に扱うこともできない。
結果――ユノスは少女に少なからずの好意を抱くようになった。

(……まだ、帰ってきてないんだろうか)

ある貴族のもとへと養子入りすることが決まり、彼女が村を出て以来、
何かを恐れて彼女を探そうとしなかったユノスは密かに少女の帰還を待ち続けていた。
彼女の笑顔を思い出そうと空を見上げたその時、



ガタン、と大きな揺れとともに馬車が止まる。
思い出に入り浸って注意力が消えていたユノスは他の荷物で腰を痛打し悶絶、
代わりにシオンが事の顛末を御者に問う。

「どうした」
「ぜ、前方に怪しい光が……ま、街の方です!」

御者に言われ視線を進行方向へ向ければ、街の中心が時折目映く発光する。
青白く、激しく疾るその光の名を脳内で探し回り、
該当するであろう項目に辿り着くと、シオンは疑問符を頭上に浮かべた。

「電気、というよりは雷光だな。だがなぜだ、なんで雷が空に落ちる」

空を穿つ蒼い稲光に目を奪われ、シオンは薄く目を閉じる。
そこへ背中をさすり、涙目のユノスがやってきてその正体を暴く。

「うちの親族関係にいるし、よく見かけるからわかる。
 あれは天誓騎士が使う技の一つで、電撃を檻のように発する技だ」

だが、と一息ののち

「あの街に天誓騎士なんていやしない。てことはあの技を使っているのは」
「街にやってきた騎士団の誰かか、敵に寝返ったごろつきか、ってことか」

そう言うや否や、シオンは馬車と馬を繋いでいた金具を外し、
御者が握っていた馬鞭を奪い取って馬の一頭に飛び乗った。
鞍に跨るとシオンはユノスの方へと向き直り、

「ユノス!オレは先に様子見てくる。後からゆっくり来るんだな!」
「そうさせてもらう。おそらくは敵襲だ。急げ」
「りょー……かいっ!」

彼は馬を奔らせた。

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