TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。
ランスブルグ、某所。
街には殺戮の跡がまだ残り、金品が奪い取られ雑然とした室内。
破壊の限りを尽くされた店頭に、もはや売り物も売る者もなくなった商品。
平和だったはずの街はひと月でこの世の奈落と化していた。
だが、すでに人気のないその街は彼らの居城であり楽園でもある。
彼らの手にはそれぞれが得意とする獲物が握りしめられて、
彼らの顔や胸には見る者が見ればわかる仮面が張り付いていた。
マスカレイド、そう呼ばれる存在へと変貌を遂げた彼らは
人の消えた街を我が物顔で練り歩いては下卑た目をぎらつかせ、
廃墟同然の街からなおも奪い尽くそうとしているのだ。
「……しっかしグレゴールの兄貴ぃ、もう目ぼしい物はなさそうですぜ」
他の仲間とともに街を見まわす男が、先頭を歩く男にしょぼくれたように声をかける。
リーダー格であろうその男―グレゴールと呼ばれている―は
多少他のものより整った服装をしているが、金の髪は薄汚れ、
街を値踏みするように見回し歩くその眼は鈍く、濁っていた。
「なァに、こういう意外とあるもんだ」
何かを見つけたのかグレゴールは店に入って家探しを始める。
倒れた棚を壊してよけて、割れた何かを踏み潰してよけて、
そうやって探すこと――わずか30秒。
割れた花瓶のすぐ近くに落ちていたそれを拾い上げる。
男が手にしたのは白い石が嵌め込まれた小さなペンダント。
「ほ~らあったあった。見ろ、ガラクタに見えるがこれもお宝だ。十分売れる」
「本当ですかァ?どっからどう見たってぼろっちぃペンダントですよォ」
「よく見やがれ。この石。光の当たり加減で色が変化してるだろ。
オパールだ。小さいし遊色効果もわかりにくいが本物だろう。
火に弱いはずだが……花瓶の水にでも浸かってたのか?ギリ売れる」
「さっすが元宝石商。よく見分けがつくもんですねェ」
小さな宝石一つの発見に部下であろう男の一人がにたりと笑みを浮かべる。
彼らにとって、その小さなペンダントやこれから奪っていくものは
他者の資産や思い出の欠片ではなく、金貨の詰まった袋に見えているのだろう。
丁寧に懐にしまいこむと、ついでと言わんばかりに店の中、金になる物を探し出す。
こうして街は、彼らに蹂躙されていく。
街には殺戮の跡がまだ残り、金品が奪い取られ雑然とした室内。
破壊の限りを尽くされた店頭に、もはや売り物も売る者もなくなった商品。
平和だったはずの街はひと月でこの世の奈落と化していた。
だが、すでに人気のないその街は彼らの居城であり楽園でもある。
彼らの手にはそれぞれが得意とする獲物が握りしめられて、
彼らの顔や胸には見る者が見ればわかる仮面が張り付いていた。
マスカレイド、そう呼ばれる存在へと変貌を遂げた彼らは
人の消えた街を我が物顔で練り歩いては下卑た目をぎらつかせ、
廃墟同然の街からなおも奪い尽くそうとしているのだ。
「……しっかしグレゴールの兄貴ぃ、もう目ぼしい物はなさそうですぜ」
他の仲間とともに街を見まわす男が、先頭を歩く男にしょぼくれたように声をかける。
リーダー格であろうその男―グレゴールと呼ばれている―は
多少他のものより整った服装をしているが、金の髪は薄汚れ、
街を値踏みするように見回し歩くその眼は鈍く、濁っていた。
「なァに、こういう意外とあるもんだ」
何かを見つけたのかグレゴールは店に入って家探しを始める。
倒れた棚を壊してよけて、割れた何かを踏み潰してよけて、
そうやって探すこと――わずか30秒。
割れた花瓶のすぐ近くに落ちていたそれを拾い上げる。
男が手にしたのは白い石が嵌め込まれた小さなペンダント。
「ほ~らあったあった。見ろ、ガラクタに見えるがこれもお宝だ。十分売れる」
「本当ですかァ?どっからどう見たってぼろっちぃペンダントですよォ」
「よく見やがれ。この石。光の当たり加減で色が変化してるだろ。
オパールだ。小さいし遊色効果もわかりにくいが本物だろう。
火に弱いはずだが……花瓶の水にでも浸かってたのか?ギリ売れる」
「さっすが元宝石商。よく見分けがつくもんですねェ」
小さな宝石一つの発見に部下であろう男の一人がにたりと笑みを浮かべる。
彼らにとって、その小さなペンダントやこれから奪っていくものは
他者の資産や思い出の欠片ではなく、金貨の詰まった袋に見えているのだろう。
丁寧に懐にしまいこむと、ついでと言わんばかりに店の中、金になる物を探し出す。
こうして街は、彼らに蹂躙されていく。
――――――♪
「ん?」
男の一人が、それに気付いてあたりを見回す。
「どうしたルキウス」
「え……ああ、いや、今なんか聞こえませんでした?」
「はぁ?」
一人の違和感が他にも伝染する。
耳を澄ましてみると、確かに何かが聞こえるのだ。
方向はわからずとも、それが物音ではないことは十分にわかる。
歌。
誰かが、何かを歌っている。
この壊れ果てた街にまだ人がいたものか、と男達は不審に思う。
だが同時にこれはチャンスだ、何かを持っているに違いない、とも考えていた。
歌声が自分たちの方向へ近づいていることに気付くと、
男たちは店の中や物陰に隠れ、じっと息をひそめた。
―朝の海は光弾く青、空の青―♪
―空の果ては、海に繋がっていると信じていた―♪
歌声が近づき、ついには声の主の姿が視認できるようになる。
夕陽を背にヒールを鳴らすのは、14、5歳の少女だった。
街の惨状など目に見えていないのだろうか、
まるで真昼の森を散策しているかのように軽い足取りで大通りを跳ねる。
ふわりとフリルがふんだんに使われたスカートが揺れ、
夜色の長い髪が動きに合わせて靡いて揺れる。
(お前ら、運が良いぞ。あの嬢ちゃんの着てる物、結構な上物だ)
(そうなんで?)
(見てわからねェのか馬鹿野郎。良いから囲め。奪るぞ)
そんな男達に気付いてもいない少女の足取りは軽やかで、
小さな唇からは尚も歌が溢れだし、弾んでいく。
―夜の海は光抱く蒼、深い蒼―♪
―沈んでゆけば、楽園に巡り着くと信じていた―♪
やがて、少女が男達の潜む店の前に。
グレゴールの合図と同時に男達が武器を隠して少女を取り囲んだ。
道を塞がれ、少女が否応なく立ち止まれば男達が賎しい笑顔で
「やあお嬢ちゃん。こんなぼろっちい場所に何をしに来たんだい?」
「この町は危ないぜぇ?狂王軍の襲撃を受けてどこもかしこも瓦礫だらけだ」
男達がさらに一歩歩み寄る。
しかし、少女は男達に怯える様子も警戒する素振りも見せることなく、男達を凝視している。
胸元に結んだピンク色のリボンが風にふわりと靡く。
「嬢ちゃん、聞いて」
「おひげは?あなたたち、おひげはないの?」
少女の第一声は、男達が予想だにしないものだった。
そして彼らの言葉も待たず、少女の小さな唇が歌うように問いを紡ぎ出す。
「知らないの?王様とネズミと小人にはお髭があるのよ。お髭がないあなた達はなに?かささぎかしら、蝶かしら?」
「へ?嬢ちゃん何を言って」
「ああ、でも魔法使いではないわ。彼らはお髭がなくては力が出ないのだもの。それとも、あなた達のおひげは泉の乙女が魔法の髭剃りで切ってしまったのかしら。嗚呼、かわいそう、可哀想だわ」
少女は彼らの事など眼中にないのか、視界に入れど聞く気がないのか。
すらすらと呪文のように唱えられる問答は自己完結し、彼らの答えを必要とはしていない。
そんな少女に彼らは共通の認識を持った。狂っていると。
最早人の言葉など届かない、妄想の住人とでも話をしているのだろう、と。
一人舞い上がったように問いを続ける少女を、男達は憐れみと侮蔑の目で見下した。
同時に思う、あまりかかわり合いたくない相手だと。
その証拠に、距離を取りたいのか皆少女から一歩だけ足を引いて立っている。
そんな愚かな部下を見兼ねたグレゴールが重い腰を上げた時には、
部下の男達は少女の支離滅裂な問い掛けに完全についていけなくなっていた。
男の考えは一つ。手っ取り早く終わらせて、殺す。仮面憑きらしいシンプルな方法だ。
「お嬢さん、悪いが俺たちも生きていくのに必死でね。命が惜しいなら金になるもの全部置いてってくれねぇか?さもないと――」
ちらつかせたのはナイフ。
が、グレゴールが言葉を途切れさせたそのわずか一呼吸の間に、
「おうじさま!」
少女が花咲く笑顔で金髪の男に迫る。
吸い込まれそうなほど丸い琥珀色の瞳に見つめられ、男が身を僅かに退けば、少女がずいと近寄って笑う。
「あなたは、王子様なの?王子様でしょう?」
「はっ?な、何を言って」
「そうでしょう?そうにきまっているわ。王子様はね、夕日に照らされた小麦畑のような金色の髪をしているのよ!瞳は冬の湖のように冷たく澄みきって――あれ?」
陶酔しきった少女が男の言葉も、ナイフも目にくれず語り続けていたその時、
彼女は気付いた。男の瞳が彼女の望む色ではなかった事に。
じっと見つめ、角度を変えて見つめても、色は変わらない。鈍く暗い鉛の色。
「――なぁんだ、王子様じゃなかったのかぁ」
刹那、
「残念」
少女の手元に二振りの刃が握られ、眼前の男の腹を斬り裂いた。
先程まで王子と呼んでいたその男が裂かれた痛みに気付く頃、
表情一つ変えず少女は身を捩じる。
隣に立っていた男の腕を斬り落として、心臓を貫く。
二人がやられて漸く彼らが、その少女を「敵」だと認識した頃、
彼女は踊るように軽やかな足取りで一人の首を刎ね飛ばす。
三人が地に伏せ、声にもならない悲鳴を上げて喚きだした頃、
少女は腕を伸ばし時計のように旋回、残る三人に皮がめくれて血が滲む程度の傷を負わせる。
瞬く間に仮面憑き6人の内、1人を殺し、2人は重傷、3人が軽傷。
彼らが戦う意思を見せる前に、歯向かう意思を潰しきった。
尚も少女は止まらない。
気分が良くなってきたのか、歌を口遊びながら男達に凶器を振り下ろす。
―ああ、私だけの王子さま。一体どこにいるのかしら―♪
―季節がめぐり変われども、わたしの心は変わらない―♪
―早くいらしてくださいな、はやく、はやく、はやく―♪
―怖い夢に怯えているのは、もうたくさんなのだから―♪
高らかに謳い上げる声は少女らしいソプラノ。
これが劇場の舞台の上ならば喝采を浴びてもおかしくはないほど、
あどけない少女の愛くるしさを持って響く歌声が廃れた街を満たす。
一歩進んで一回ターン、クロス、タップ、オープン。
戦っている、というよりはただ振り回しているだけのようにも思えるが、
刃が新たな軌跡を刻むごとに一人、また一人と命の灯を消されていく。
確実に、死へと追い込む。
少女が一曲を歌い終える頃には、一人を除き死に絶えていた。
唯一意識を保っていたその男も、口内に溜まった血を吐き出すので精一杯。
ナイフを握り、戦うだけの力は残されていなかった。
「……っ!かは、く。あ」
「あら、まだ息があったの偽王子様」
少女がグレゴールに気付く。
最初彼に向けていたその眼差しは冷えきり、関心すらなくしていた。
事務作業のように刃の一本を男の背に突き刺し地面に磔にすると、
少女は呻く男の髪を掴み、その眼をじっと覗き込む。
男の恐怖に歪んだ目が映したのは、少女の狂気じみた笑顔。
「王子様のふりをして、ステラの邪魔をして――楽しかった?」
切先を男の眼にぴたりと合わせると、少女から表情が消えた。
「た、ずげ」
「邪魔よ。その目も仮面も、見たくないの」
愛らしく終わりを告げ、まっすぐ突き刺した。
* * * * * *
ランスブルグ、某所。
街には殺戮の痕が色濃く残り、一人の少女が歌いながら大通りを歩む。
紫を孕んだ夜色の髪に艶のある琥珀色の瞳。
血濡れた二振りの凶器を手に、純粋なひとつの恋心を胸に、
ステラ・ドゥムノニアは意気揚々と下層を目指した。
「ああ――待っていてね、王子様。迎えに行くわ」
※ドゥムノニア家長女、ステラ。
イノセントの二刀剣士な彼女は幼少期に出会った「王子様」を求めて
道行くマスカレイドをジェノサイドしながら町をうろついています。
ヤンデレ。
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