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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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ランスブルグ第三階層。
この場所にカメロット家の分家のひとつ、アヴァロン家の納める領地がある。

アヴァロン家はカメロット家分家とは言われているが、
実際は独立した家系と言ってもいいほどの権力と立場を確立している。
それでも彼らが「本家」に付き従うのは、
長らく続いた血の歴史と、その中で育まれた純粋な信頼関係に基因する。

特に現当主バルクとカメロット家先代当主ウーゼルとの絆は深く、
約8年前の本家大量殺害事件により彼が死亡した際も
迷わず犯人列挙のために領内の仕事を放棄し、
周囲に多少の被害を及ぼしたほどである。
「アヴァロンはカメロットの最良にして最高の友」
「我らこそカメロット最後の砦となるのだ」
祖先より受け継ぐその言葉を体現した類いまれなる熱血漢
バルク・アヴァロンの思想は彼の子らにも強く影響している。






長い廊下を歩く赤髪の美丈夫は、先程届けられた手紙を見ていた。
現当主として多忙なバルクに代わり第三階層の一部領地を任されている彼は
切れ長い金色の瞳で差出人の名を見つめる。
差出人の名は「アーサー・カメロット」
彼はその名を知っていたし、それが誰かもよく知っていた。
幼い日にほんの数回見た少年の姿を瞼の裏に浮かばせる。

(本家の生き残り、あの時の少年か――)

目を開き、青年は一房だけ伸ばした髪をくるくると弄る。
思い返す少年の姿は頼りなく、いつだって悲しげに目を伏せていた。
ああ、彼も随分と大きくなったものだ。
数えるほどしかない少年の思い出に浸りながらも、
青年は丁寧に封を切って中に入っていた手紙を取りだした。

(最近は他の家と相続の話でもめていると姉さんが言ってたな……)

彼の姉は前から相続の件でアーサーの相談を受けていた。
この手の話は苦手を越えて理解できてないと踏んでいた弟にとってすれば、
清々しいほど豪快で悩みとは無縁の姉が
珍しく表情を曇らせていたことは衝撃的だった。
そして、彼もまた事情は多少は知っている。
髪を弄りながら折り畳まれていた手紙を開く。


『カメロット家分家、各関係者に告ぐ。

祖父カークヴァイの遺産相続については
以前送った手紙の通り、僕に相続の意思はない。
僕がランスブルグへ戻るべきだと言う声もあるが、
不満がある者は直接僕に言いに来い。
恐らくこれからランスブルグを出発しても
こちらに着くまでにはそれなりの時間もかかるだろう。
故に、期間は8月末日までとする。
それまでにラッドシティに来ることが出来なかった者、
またラッドシティに来ることを拒むものの意見は全て却下する。


紫煙群塔ラッドシティにて待つ。』



高圧的な文章に相反し几帳面な字体で書されたそれには、
丁寧に町までの地図まで添えられている。
随分と図々しく、偉そうになったものだ。
手紙を封筒に戻すと、彼は嬉々とした表情で封筒を懐にしまい込む。

(――――立派になられましたね、アーサー君)

乾いた唇を舐めると、青年は表情を戻す。
歩みを速めると、通りかかったメイドに声をかけた。

「イアン様、どのようなご用件でしょうか」
「明日の朝にもこの街を発つ。長期間不在にするから代理の者を呼んでおけ」
「は、はい」

告げると、彼は突き当たりの部屋へと入っていく。
本棚、ソファー、寝具に至るまで、室内は几帳面に整えられているが、
執務机の上には山のような書類が鎮座している。
その一枚に目を通し、元あった場所にきっちりと置き直すと
彼はベストを脱いでベッドに放り投げた。

「『アヴァロンはカメロット最後の砦』か。――当たり前ですよ父さん」

青年――イアン・アヴァロンは妖しく笑う。
その目は鈍く澱んでいた。
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