蒼空

薄手のブランケットを階下に落としたあと、縄梯子を降りる。
そろそろちゃんとした階段を用意しないと移動が大変だ。
今度知り合いの星霊術士にでも頼んでみよう。

ソファーではポーが丸くなって眠っていた。
どうやら眠りが深いらしく近付いても気付かない。
ブランケットをかけてやっても反応がなかったから
音と気配を消してそっと顔を覗き込む。

それにしても驚いた。
最初は何が起こったのか解らず、思わず敬語になってしまった。
すんなり抱きついてきたときには本音を隠すので必死だった。
見上げてくるあの丸い曙橙色に吸い込まれそうだった。
ああ、どうしてこうも君に弱いんだろうか。
無意識の猛攻に耐えたそのあと、問われた言葉を思い出す。

――あーさーは四葉のクローバーの花言葉って知ってるの？

あの時は知らないと答えた。
そう答えた方がいいだろうと。
そうしたらあの有り様だよ。なんなんだあいつ。
今回はぎりぎり我慢はできたが二回目はないと思えよ。
と寝てる彼女に言ってはみるがどうせ覚えてないだろう。
花言葉？知ってるに決まってるだろう。
ラッキーライラックの意味を探していた時、
ついでに他の花のページもぱらぱら読んでいたときに見つけたよ。


四つ葉のクローバーの花言葉は『幸運、私のものになって』


ささやかな願いと、叶わぬ願いのふたつ。
送りつけては気付かれないままの願望。
もっと分かりやすく、薔薇の花でも贈った方がいいんだろうか。
何本目で気付くだろうか。
それを楽しみにするのもいいかもしれない。
まあ、こいつなら砂糖に漬けてそれで終わりの可能性もあるが。


眠る彼女の手を取る。
――気付かないお前が悪いんだ。
そんな言い訳を考えながら、腕に唇を落として
その場で眠った。





※食堂会話アフター
　妄想がとどまらなかったので書き逃げしてみる。