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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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エレインが実家で義姉と雑談している様子を
近くの森から監視している者達がいた。

一人――頭巾でくすんだ赤の髪を隠し、闇に紛れるような黒の装束に身を包む女。
一人――鉄仮面で顔を隠し、木々に紛れるような深緑のローブを纏う奇怪な男。
「カメロット家当主」を護る為、レイス・アヴァロンが派遣された師団員だ。
彼らの任務は「当主」たるエレインに気付かれぬように彼女を護る事。
その任務を忠実にこなすべく、二人はエレインから極力離れず、
けれど悟られぬ範囲でかれこれ1週間は彼女を監視し続けていた。
だが、彼女を狙う敵が現れるはずもなく、彼女が危機に陥るような事態も起こらず、
今日も平和なまま過ぎ去ろうとしていた。

(――団長の判断ミス、か。いや、可能性は0ではない)

女は細い枝の上にいるにもかかわらず、両の手を胸下で組んだまま、
数メートルは離れているはずの牧場を見ていた。
狩猟民の一族に生まれたこの娘、パメラは生来目がよく、夜目が利く。
多少距離が離れていようと逃さない猛禽の目は談笑する少女を捉えている。
牧場近くに怪しい動きをする者もいない。
今日も平穏無事に一日が終わるのだろうか、女は頭の片隅で呟いた。
だが、彼女の不安は外敵以外にも存在している。

(……オルガ・サグラ。奴は何を考えているのだろうか)

彼女はわずかな時間、少女から視線をそちらへと移す。
オルガ・サグラ。今回の任務で同行することになった仕事仲間だ。
彼はというと女の真下、樹に寄りかかったまま
なぜかエレインのいる牧場ではなく、町の方面を向いている。
仮面をつけている為視線がそちらになっているかはわからないが、
恐らくは、町を見ているのだろう。
パメラもそちらを見遣るが別段何もおかしなところはない。
静かな町には夜の空気だけが満ちていた。

女はあまりこの同僚のことを好ましく思っていなかった。
行き倒れていたところをレイスに助けられた、という話を聞いたのだが、
任務以外での他人との接触を好まないこの男は、
素性を隠し、素顔を隠し、声も出さず足音を立てず、
仕事以外では人前にも現れる事は少なく、時に気配すら消して姿も眩ます。
彼の真意を知る者は恐らくこの世で二人、本人とレイスだけだろう。

それでも、この男はレイスの率いる師団『煉獅子』の副官
――すなわち、自分と同じ地位を獲得している。
実力はある、任務も忠実にかつ完璧に遂行する。物言わぬ刃のような男だ。

(わからない。奴の考えだけが、私には見えない)

だからこそ不安にもなるのだ。



そしてその不安は的中する。

茂みの揺れる音を聞いて視線を落とせば、
オルガが持ち場から離れ、町の方へと歩いていた。
監視対象であるエレインが未だ牧場にいるというのに、だ。
パメラが慌てて木から飛び降り、オルガに駆け寄ると
彼もそれに気付いたのか足を止め、彼女の方を向き直る。

(待て、どこに行くつもりだ)

小声で男に話しかければ、男は鉄仮面の下から呼気を漏らす。
オルガは女の手を取ると、指先で慣れない文化の文字を綴る。

(Stay here  Leave that place)
『ここに残れ。あちらは任せろ』
「……?残れ、か。あちらとはなんだ?」

女の細い腕の上へ丁寧に、一文字一文字書く。
パメラは未だ文字を書くことに不慣れな男の指先を見つめる。
指の動きと感覚だけでそれを読みとるのは難しいものの、
下手なジェスチャーよりは分かりやすいものだった。

smell. gunpowder. I go to put it out
『臭い。あれは火薬。わたし、消しに行く』
「臭い、火薬……? まて、もう少しゆっくり書いてくれないか?」

男の指先がわずかに震える。
言葉の発し方を忘れたこの男は、他者との一通りの会話はジェスチャーで行っていた。
が、元々他者と会話するほど親しく接したことがなかったらしく、
幼稚園児のお遊戯と見間違えそうになる動作ばかりであった。
(勿論の事だが、彼の伝えたい内容の過半数は伝わらなかった)

また、任務内容には時に複雑で専門的な用語を用いる場合もある。
動作だけでは伝えきれないことがあまりにも多い。多すぎる。
それを見かねた彼の上官(レイス)が教えたのが文字だった。
教養ある貴族の娘でもあるレイスは仕事や哨戒の合間を見つけては、
任務で必要な単語や数字、伝達で使用するものは大体教え込んだ。

レイスに対しては人一倍従順なオルガもこれを真面目に学んではいるのだが、
自分の言葉を文章にする、それを書き続けるという行為が苦手のようだ。
再度、女の腕に何かを書き出すオルガ。
急いているのか字面は荒れて、走り書きに近い文章が女の腕に残る。

(rodder  Seven  easy operation.The master entrusted yo-)
『賊だ。 7人。 仕留めるは楽。ご当主様は、あなた任せる』
「! ま、待てオルガ!」

書き終えると同時に、男は走り出す。
金属鎧を纏っているというのに木々の合間を縫うように走る動きは軽く、
瞬く間に男の姿は夜闇の森へと消えて行った。
残されたパメラは苦虫を潰したような顔で、女は男の残した言葉の解読を試みるも
思い返そうとする頃には腕に掻かれた感覚は消え失せていた。

「最後が読めなかったぞ、rod……杖?くそっ、綴りも文法も間違えてるな……!」

走り去った方向を見るも、既に姿はない。
女は仕方なく木の上に戻り、当主たる少女の姿を確認すると、
何事も無ければいいが――そう呟いて溜息をもらす。

(まあ、あいつだってそれなりに強いんだ。7人くらいは平気か)

出来る事なら、はやめに片付けて帰ってきてほしいものだ。
好ましくは思っていないものの、信用できる同僚の無事を密かに祈った。



数分後。広場のある方向から爆音が聞こえた。


※NPC補足
パメラ・ランカン
非エンドブレイカー、ナイフの狩猟者。
狩猟民族の出ではあるが、一族の設定は未だ練れてない。
日に焼けた肌に無駄なく筋肉の付いた細身の女性。
気持ちクールビューティー。

オルガ・サグラ
エンドブレイカー、剣の忍者
彼の台詞は『言いたい事』と(書いている文字)で表してます。
ただし、書いてる文字は玉につづりや文法を間違えさせてます。
わざとです、わざとなんですよ!
彼については次回詳しく話します。
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