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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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※この記事は記事No91「懐かしい名前だ」の続きです。
とりあえずこの記事から読んでも訳わからん状態になるので、
上記の記事を読んだ後に続きから本編をお読みください。

 * * *
 

はずだった。
突然両肩を襲った焼けるような痛みにレイスは動きを止める。


「なっ……!?」


レイスの肩を襲ったのはエレインの撃った弾丸2発。だが、先程レイスが叩き落としたものではない。
その一手前、レイスに武器を弾かれたその後、距離を取った少女が放った2発の弾丸。
エレインは倒れたレイスではなく、自分からほど近い場所にあった小さな小石。それに向かって放っていた。
魔力の弾丸は音もなく弾む。小石に当たり、その後不規則に周辺の壁をぶつかり続け、加速。
最後は彼女の両肩を穿った。
よく出来た偶然か、それとも計算された行動か。どちらにせよ、自分から注意を逸らした目の前の敵を、
絶好の好機を少女は逃さない。
少女はレイスとの距離を詰める。
少女の接近に気付いたレイスはすかさず拳を振り上げ、少女に殴りかかる。
エレインは拳の流れを銃身で受け止め、弾きあげる。そして即座に攻撃。殴りつける。
だがこれをレイスは回避。痛みなど気にする様子もなく少女に殴りかかる。


「はあああああああああああああああああああああああああああっ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


二人の騎士が叫ぶ。
怒涛の零距離攻撃を互いに繰り出し続け、互いに弾き続けている。
拮抗した状況を先に破ったのは――エレインだった。
レイスの放った蹴りを蹴りで弾き、流れるように銃を持ちかえ、グリップでわき腹に殴打。
鍛えようのない箇所に抉りこむように入った一撃に、レイスも苦悶の表情を浮かべる。
それを確認すると少女は僅かに後方へステップ。双銃を構え、周囲を確認。
発射。
計12発の弾丸が戦場を所狭しと跳ね回る。不規則な軌道で飛び回る弾丸を回避する事は歴戦の強者でも難しい。
それに加え、右足の負傷がレイスの動きを狭めているものの、彼女自身の意地か、数発を回避した。
着弾した残る数発がじくりと痛む中、レイスは反撃の態勢を取る。この戦いの中幾度となく見せた輝き、
レイスの拳が光に包まれると強く腕を引き、少女の肩を狙って射出。
が、足に力が入らない。即座に軌道を修正、彼女の持つ武器へと拳を突き出した。
すぐさま防御の構えを取ったエレインだが純粋な腕力の差か、踏ん張り切れずに後方へ殴り飛ばされる。
足の違和感が強くなるにつれ、レイスの少女に対する印象が変化していた。
戦闘慣れしていない新人だと彼女は言っていたが、少女には十分すぎる技術がある。
自分の攻撃に対する少女の姿勢、果敢に挑んでくる時もあれば距離を置き様子を見て的確に隙をついて技を繰り出す。
この少女が、あの怯えた目をしていた少女が、たった数回拳を交えた程度の少女が、
今自分に銃口を向け、眼光を向け、牙を向けている。

――ああ、そうだ。こういうやつを求めていたんだ。

レイスは笑っていた。


 * * *


機は熟した。
先程の攻撃でわずかに腕が痛むが、それほど大したものではない。
少女は走る。狙うはただ一つ、初手に付加した女の弱点――右足への攻撃。
視線はそらさず、直進した後に足払い。女の反撃を予測していたのか、エレインは次に右手の篭手に向かって至近距離射撃。
跳ね上がる右腕。バランスを崩したところで思い切り体当たり。地面に倒したところで分厚い胸元の装甲に射撃。僅かに罅が入る。
女も黙って倒されるわけにはいかない。左腕でのしかかる少女に反撃を繰り出すが、少女は更に射撃。再度腕が弾かれた。
ここでエレインがレイスから離れる。ぎりぎり間合いから外れた位置で二丁の銃を平行に構えた。
冷静に自分を見据える少女にレイスはじわりと痛む左腕を見て、笑った。


「これだよ、己が望んでたのはこういう戦いだ!」


喜びを吼え、女が動く。
少女に向かい直進猛進、気魄を乗せた強烈な突進が少女の構えを崩す。
女の剛腕が武器ごと少女を薙ぎ、勢いに乗ったまま腹に全体重をかけた肘を叩きこむとエレインは苦痛に顔を歪めた。
余裕の嘲笑。
だが、笑みを浮かべるレイスに衝撃が走る。
エレインの膝がアーマーの無い横っ腹に深くねじ込まれ、渾身の力を込めて女を自身の上から弾く。
腹を抱えて身体を起こしたエレインは即座に距離を取る。


(損傷、大……ぅぅ、今の本当にいたかった、痛かったぁ!)


脳裏での弱気な発言とは裏腹に、鋭い眼光をレイスに向けるエレイン。
普段ならば痛みに堪え切れず泣き出しているはずの彼女が、射抜くように真っすぐと眼前の女を見ている。


(次は負けない、負けないんだもん!)


気付けば女に向かい、走り出していた。
レイスの一歩手前で右足で強く地を踏むと、高く、勢いよく蹴りが飛ぶ。
少女の細い足が右腕のガントレットに命中、流れるように銃を持ちかえグリップでほぼ同じ個所を殴打する。
少女の攻撃により駆動部に異変が生じたのか、異音を鳴らすガントレットに表情を曇らせるレイス。
しかしまだ死んでは(壊れては)いない。
再三距離を取った少女を一瞥すると、レイスは目を閉じ、握りしめた両の拳を胸の前で力強く重ねる。
一呼吸。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
――キィィィィィィィィイィィィィィイイイィィィィィイィィィイィィィイイィィィイ!!――


開眼。絶叫。
獣のような咆哮と共に、ガントレットが金切り声を上げた。
刹那、目も眩む暁の陽光がガントレットに纏わり、防御の構えを取る少女に向けて放たれる。
レイスの攻撃パターンから次の攻撃の予測を行っていたエレインだが、想定外の目映さと裂帛の気合いに気圧されてしまう。
視界が白に染まる。目を焼かれたのか、正確なレイスの位置が見えない。
それでも少女は走る。音が、けたたましい、バンシーの叫びにも似た駆動音が聞こえるのだ。
エレインもまた、レイス同様に目を閉じる。女のように気を高めるためではない。気配を測るためだ。
二歩、そこで足を止めミドルキック。
足の裏に重い感覚と、女が小さく呻く声が聞こえた。
エレインは双銃に気魄を乗せ、頭上で銃身を交差させる。落ちてきたのは――レイスの拳。反撃の一撃だ。
それを銃で受け止めると押し上げるようにかち上げる。
反撃は止まらない。レイスは左足を軸に、痛む右足で強烈な回し蹴り。
少女はこれを寸での所で回避すると、続けて放たれた肘打ちを銃で受け流し側頭部に一撃。
本当に相手の姿を見ていないのかと疑うほどに、少女の動きは完成されていた。
少女が静かに目を開く。奥深い紫を含んだ青の瞳が見たのはレイスではない。
戦場。今二人の騎士が立つその場所、鉄と血の入り混じる空間。
だが少女はもう怯えてはいなかった。その場所は、すでに少女により「把握」されていた。
少女は銃を構え、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
二丁の銃から吐き出された魔弾は戦場を踊るかのごとく跳ね回り、レイスの赤い装甲を無残に貫く。
女は膝をつき、息を荒げている。蓄積されたダメージも相当のものだ。
少女は確信していた。己の勝利を。
女は確信していた。少女の成長を。
故に、騎士としての矜持が燃え上がる。


「っ……らあああああああああああああああああああああああっ!!!」


レイスが立ちあがり、叫ぶ。
鳴り響く右腕に赫々たる輝きを宿し、気魄を込めた突きを少女へと貫かんと突進。
その身に残る力全てを注ぎ込んだ至高の一撃は、完璧ともいえるタイミング・フォームでエレインに放たれた。
しかし、レイスの攻撃は少女には届かない。
否、届くよりも先に、突く腕が伸びきるその瞬間にエレインは女の胸元に飛び込んできたのだ。
視線が交差する。金と蒼、互いに互いの姿を映し、

――笑った。

一撃。最後は相手の勢いを利用した少女の貫手が鳩尾に決まり、女はその場に崩れる。
まだ未熟であるはずの少女騎士に軍配は上がった。

 

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