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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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宿屋に戻ったその後、アーサーは父と共に外食に出た。
第二階層に来た時は大体ふたりは馴染みの宿に泊まり、
お気に入りのパスタが美味しい店で夕食を取る。
窓際の、通りの見える席に案内されると、
アーサーはカルボナーラを、父エクターは今日のおすすめを注文し、
一日をゆっくりと振り返るのがささやかな楽しみとなっていた。

エクター・カリブルヌスは名医というわけではない。
だが、自分が治せる病気と治せない病気、それを理解していた。
自分で事足りることならば精いっぱいの治療を、
自分では力不足だと思うことには他の医師の協力を仰ぎ、
自分でできる限りの措置を懸命に行う。
己の力量を知り、己の未熟さを知り、その上で高みを目指す。
「この人になら命を預けてもいい」と安心できる医者だった。

そんな彼を見て育ったためか、息子も娘も父の仕事に興味を持った。
気づけば兄であるアーサーは医学を学び、父の手伝いを。
妹のエレインは薬学を学び、施療院で働いている。
父も「子供たちが興味を持ってくれたのなら」と自分が教えられることを教え、
彼らを導くべく、良い教育者として良い親として接していた。





「で、どうだったんだ?今日の劇は」

仕事の話がある程度終わると、エクターは息子に微笑む。
二人で並んでいると親子ではなく兄弟に見えるといわれるほど、
齢48にもなるこの男は若々しく――否、幼かった。
声は息子のそれよりもわずかに高く、少年的で、
人を引き寄せる温かい笑顔も相まって、20代後半の好青年に見える。
淡い金糸の髪も、紫を抱く青の瞳も、ほどほどに高い身長も、
果ては顔立ちまでもアーサーは父親から譲り受けたのだが、
この人馴れした子犬のような笑顔だけは遺伝しなかった。
パスタを巻く手を緩めて、アーサーは父の目を見て答える。

「ああ。劇自体は最高だったよ。運よく、花の女神が主演のものがあったんだ」
「へぇ!よかったねアーサー!花の女神の劇だなんて、父さんも行きたかったな」
「それなら今度、一緒に行く?カナリアと空も延長公演決まったし、ちょうどいい」
「本当かい!わぁ、アーサーのお誘いなんて久しぶりだなぁ……」

劇自体、という言葉は自然とスルーされたのか。
今日のおすすめ――ミートボールミートソースを頬張り、
エクターは口の周りを汚したまま、嬉しそうに笑った。
そんな父親を見て苦笑いを浮かべたアーサーは
ミートソースだらけの口を布巾で拭ってやる。
こうしていると、どちらが親でどちらが子なのかわかりはしない。

「父さんは人気者だからね。患者さんに引っ張りだこで、いつも忙しそうだ」
「そうかなぁ?別に人気ってわけじゃないと思うよ」

エクターはフォークを咥えたまま、むー?と首を傾げる。

「僕は仕事以外には何もしてないよ。
 ただ、患者さんのことを理解するためには、相手の話を聞くのが一番。
 そう教わったから実践しているだけさ。大したことじゃないよ」

言い切ると息子に微笑んで、父は順調に食べ進む。
アーサーは父のこういうところを尊敬している。
人に対して素直で正直で、仕事にも真面目に朗らかに取り組む。
さらに言うならば、エクターは信頼の達人だ。
他人の病原(悪い所)を見つけるのは上手なくせに、
他人の短所(悪い所)を探すのは異様に苦手。
そのくせ、相手がどんな悪態をついてきてもそれを脳内変換し、
自分への叱咤激励であると判断したうえで「ありがとう!」と笑顔を向ける。
そんな父が苦手な医師も多く、そんな父を尊敬する医師も多い。
恐ろしく無垢なこの人が自分の父で良かったと、アーサーは常々実感していた。
そんな息子の考えをよそに、エクターは最後まで残していたミートボールを
一口で食べてゆっくりと噛んで味わっていた。
息子が嬉しそうな顔をして食べている姿を見て、笑顔がさらに咲く。
口の中から物がなくなったその後に、エクターは付け加えた。

「でも、人に好かれるのは嬉しいよ。母さんが困らない程度に、だけどね」

エクターが完食し、からり、とフォークを置いたその時、
ウエイトレスが妙に可愛らしい物を持って席にやってきた。

「お待たせしました。デザートの苺サンデーになります」
「あ、私です!私のです!」

ぴしりと手を挙げる、非常に良い子な父を見て、
自分でも気づかぬ間に笑みがこみ上げていた。



※パパ情報
 エクター・カリブルヌス(48)
 第三階層の片田舎にある施療院の主。
 人懐っこく朗らかで、笑顔の絶えない心優しい男性。
 容姿はアーサー、性格はエレインなぽややんとしたお父さん。
 甘いもの好きで非常に子供っぽい。ポメラニアン。

 現在は経営が悪化しているため遠出することが多く、
 最近はもっぱら上層の病院、施療院で働いている。
 家を空けている間、施療院の運営は妻クレアと娘エレイン、
 住み込みで働いている医者の青年の三人に任せている。

 第二階層や第一階層で知る人は知る医者なのだが、
 患者と親しくしすぎる「医者としては」甘い所から名医とは呼ばれない。
 ただ、患者からの人気は高く、注射がうまい(そんなに痛くない)ため、
 子供や高齢者の相手を任されることが多い。

 装飾品はあまり身に着けない主義だが、左手薬指には指輪をはめている。
(「麦穂を抱く鳩」の紋章が刻まれている、家宝の指輪)
 最近はエレインに誕生日にもらったトルコ石のループタイを常用している。

 一人称は私、家族の前では僕だったり父さんになる。
「父さん嬉しいよー」とか「僕も一緒に行っていいの?」とか。
 とにかく口調は幼いイメージ。「パパ」とどっちがいいか迷った。
 あとはどこぞの賢者に似せておけば大体それっぽくなる←
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