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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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午後7時。
月も雲間に隠れ、心地よい風が暑さを殺ぐ、過ごしやすい夜。
アヴァロン邸にはすでに準備が整い、既に200人近い客人が集っていた。

カメロットの領地内でもアヴァロン領は「絶対的に安全」と言われているほど
治安が良く、且つ活気に満ち溢れた領地でもある。
犯罪検挙率の高さもさることながら、再犯率が多と比べ圧倒的に低いのが特徴的で、
それに最も貢献しているのがレイス・アヴァロンの率いる攻勢師団『煉獅子』だった。
構成員の半分以上が元犯罪者という悍ましき師団ではあるのだが、
経験者にして専門家たる彼らがいるがゆえに防ぐことができるものもある。
事実、アヴァロン邸に「剣の要塞」の称号を銘打ったのはかつて義賊を名乗っていた娘、
『煉獅子』副官パメラ・ランカンが「賊による屋敷への侵入方法」についてを講義し、
警備の穴という穴をすべて塞ぎつくしたためであった。
その甲斐あって、彼女の講義以降アヴァロン邸に潜入が成功した賊は一人としていない。

完璧ともいえる「鉄壁」に来客達も気を緩めているのか、
会場となった大広間は談笑する人々の声に満ち溢れており、
中には主役の登場を待たずに酒を飲み始める者や、
馬鹿笑いして売られた喧嘩を買っている奴らさえいた。
場末の酒場と紳士淑女の社交場が同居する異様な空間を一瞥し、
少女は重々しく息を吐く。

「なん、ていうか……貴族サマのパーティーって感じじゃねーっすよねぇ」
「たり前だろ。あのアーサーの家のパーティーだぜ?普通なはずがねぇよ」

少女の呟きに返したのは隣に立つ冒険者風の青年。
二人の服装は礼服に身を包む他の客と異なっており、
少女は東洋風の拳法着、青年は麻の上下に革鎧を纏った簡素な装備。
宴で行う模擬試合のために、という名目でこのパーティーへ呼ばれた彼ら――
ウォルラス・ガーフレットとマユラ・ケイは壁際に立ち、
自分たちを呼びつけた当人が現れるのを待っていた。
料理を盛った皿を片手に、自分たちとは違う「それ」らを見ながら
探すこともなく待つというのは至極退屈なことだった。
そんな退屈に飽きたのか、純粋に小腹が減ったのか、
マユラは皿に乗っていたフライドチキンに豪快に齧り付いた。
鼻をくすぐる香草の香りと肉の味に満足げに目を閉じると、
口の中の肉をじっくりと噛み締め堪能する。

「そーっすよねぇ、あのアーサー先輩のおうちですもんねー」
「まーな。って、なんだよマユラ、腹減ってんのか?」
「戦う前には腹ごしらえっす。うちのおじいも口煩く言ってますからねー」
「お、それは名言だな。賛成サンセー、俺も食うとすっかな!」

肉を飲み込んだマユラの指先が「次は何を食べようか」と皿の上で迷う。
ウォルラスもまた山のように盛っていたミートソーススパゲッティに
待ってましたと言わんばかりに食らいつこうとした。
そんな時、二人の目に一組の若い男女が目に入った。

少女は淡い薄紅のドレスの裾を揺らし、慣れないヒールで歩を進める。
その顔には一抹の不安。元々人見知りの少女からすればその場所は未知の領域だ。
雛鳥が親鳥の翼に隠れるように、指先でぎゅっと青年の服を掴んで離さない。
青年は青の礼服に身を包み、少女に寄り添い歩く。
普段の冷たい眼差しもまるで冬の泉のように静かで穏やか、
視線の先に少女へ気遣いの声を掛け、柔らかく微笑む。

さながら初々しい恋人同士(カップル)を思わせるその二人は
自らに声を掛ける人々と簡単な挨拶を終わらせるとウォルラスとマユラの前にやってきた。

「久し振りだな、ウォルラス。マユラ。二人とも元気だったか?」
(自慢だな)(確実に自慢しに来たっすね、アーサー先輩……)

青年の幸せそうで柔らかな笑顔を、二人は同一の意見と乾いた笑顔で迎えた。


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着替えの終わったポーシア・ローシアは疲弊していた。
つい先ほどまで繰り広げられていた着せ替えごっこのこともあるのだが、
あらゆることに対して気を使わなければならない現状に疲れ切っていた。
施された化粧、薄く軽いドレス、紅茶と茶菓子。
ついでに自分を取り囲み「可憐だわ」「愛らしいわ」と盛り上がるメイドたち。
慣れない環境に居続けること――否、慣れない環境から逃げ出せない現状ほど
彼女のGUTSを減らせるものはなかった。

ぶっちゃけると今すぐ服を着替えてどっか行きたい。
ここではないどこか、緑の多い場所がいいな、とポーシアは目を閉じる。
木々が茂った丘。なだらかな緑の稜線。好きなものを思い浮かべて。
ああ、海もいい。泳げないけれど、眺めているのは好き。
そうやって現実逃避を始めた時だった。



礼装は嫌いじゃない。
ネクタイを締めることがほとんどないから、タイピンを留めるだけで心が弾む。
袖を通すと自然と背筋も心も真っ直ぐ伸びてしまう。

だが、パーティーは好きじゃない。
様々な理由をこじつけて催してはいるが、
本当の目的は権力の誇示や忠誠心の確認のため。
大体の客人はそれに気づいているし、渋々参加しているやつばかりなもんだ。
世辞と張り付いた笑顔が並ぶあの場所にいるのは気分が悪くなる。

本音をぶちまけると、このままこっそりと抜け出してしまいたい。
彼女と一緒に、幼い日に訪れたあの別荘に行って、
花でも眺めながらゆっくりとした時間を過ごしたい。

だが、「主賓」の親族なのだから出なければならない。
下手をすれば僕自身が主賓として迎えられてたんだから
その辺は我慢しなければならないのは当たり前だ。

(とは言え、あんなことがあった後だからな……)

ため息をひとつ。
女王騎士によるランスブルグ襲撃から2ヵ月が過ぎ、
第三階層はようやく落ち着きを取り戻したが、
戦禍の残滓は未だ人々の心の奥底に蔓延っている。
そこへ追撃をかけるような新事実の洪水だ。
三日月湖で出会った少女の話はエンドブレイカー達に衝撃を与え、
同時に「作られる理不尽な終焉を壊さねばならない」と僕たちに運命づけた。

そんな慌ただしい2か月。
本来ならこのパーティーも延期すべきだったのだが、
一時的ではあるが平穏を取り戻した今のうちに、
また新当主たるエレインをこの地に拘束できる間に開きたいと急かされ、
急遽第三階層にあるアヴァロン邸にて開催が決定した。
考えれば考えるほど間抜けた話だ。
舞台も整わぬままに役者だけ揃えて本番に挑もうとしているようなものなのだから。




アーサーはその日、「古恋る鳥」の自室にいた。
いずれやってくるであろう第二階層への進軍を待ちながら、
明日開催されるエレインの当主披露パーティーに向けて、
身体と心を休めることが先決であると判断したためだ。

先日の遺跡調査においても楽しみすぎて一晩眠れず、
昼過ぎに倒れてそのまま調査終了という悲しい結末を迎えてしまった。
本人からすれば、イヴ・ザ・プリマビスタとの邂逅よりも
老ゼペットと対面する機会を逃した方がショックだったらしく、
「次会った時には絶対真っ向から切り込む。そして奇術を堪能してくる」
と意気込んでいるくらいだった。
多少の嗜虐思考が含まれている気がするのは、恐らく気のせいだろう。

かくして、学んだようで学んでない青年は残りわずかな休日を
空調を整え、比較的快適な自室で過ごすことに決めた。
本当なら早朝まで彼の部屋で丸まって眠っていた愛しい少女と共に
のんびりと近くの川に出掛けようかと思っていたが、
「今日はシーツ洗っておきたいから今日はダメ」
と、断られてしまったため、今は退屈しのぎにと知人から借りてきた本を読んでいる。
(なお、彼女はというと窓の外、晩夏の日差しの中で歌いながらシーツを干していた。)

ふと、何か自分とは違う何かを感じ取る。
気配を辿って扉を見れば、そこには一人の少女。
据え気味の金の瞳でアーサーを見つめるその少女は、
紫のゴシックドレスに身を包んで扉の前に立っていた。

見知った少女に冷たいままの眼差しを向ける。

「マルクト、か」
「ええ。今はお忙しいようではなさそうでしたので」

名を呼ばれ、少女はスカートの裾をつまんで一礼。

「マルクト・カリス。ただいま参上いたしましたわ」

夜の森を映した少女がそこにいた。




蒼空
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