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TW3「エンドブレイカー!」内PC関係の雑記。

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客人たちの喝采により舞台は幕を閉じ、夜は緩やかに深みを増してゆく。
壇を降りた少女を待っていたのは「洗礼」ともいえる人の群れ。
若く愛らしい当主を囲むようにやってくる人々は、
ひとり心の中で悲鳴を上げながら大慌てしている彼女を置いてけぼりに
名を告げ、祝辞を口にしてはその白い手の甲に忠誠を誓う。
慣れない環境での慣れない待遇に、先程までの威厳は彼方。
見かねたイアンが彼女に付くまで彼女は道に迷った子供のように震え続けていた。

「大丈夫ですかエレイン様。なんと言えばよいのでしょうか……
 先程の演説が奇跡としか思えないくらいに震えておいでですが」
「だだだだだだってええええ!こんな、こんなたくさんの人にわらわらされるのはじめてで!」

顔はかろうじて笑みを作れてはいるものの、目頭にはうっすらと涙が滲み始めている。
緊張の糸が雁字搦めに彼女を縛り付けている中、一人の青年がやって来た。






「――エレイン様、カメロット家当主就任おめでとうございます」

礼に則った挨拶と共にエレインの前に立ったのは、ユノスだった。
普段の呪術士めいた様相も礼装に身を包めば様変わり、貴族らしい雰囲気を纏っている。
それでも変わらない、消しきれなかった目の下の隈と、「窮屈だ」と言いたげな視線を飛ばす顔馴染みの姿に、強張っていたエレインの表情も自然な笑みに変わった。
愚痴のひとつでも聞こうと、いつも通りに名を呼ぼうとするエレイン。
が、ユノスはそんな彼女を制止するかの如く少女の手を取り、視線は合わせず口を開く。

「我等ドゥムノニアはカメロット家の影にして懐刀。
 貴女様が望むならば如何なるご命令にも従いましょう。
 生涯の忠誠を誓い、貴女様に害なすあらゆる要因を駆除し、
 カメロット繁栄の為にこの身を削り働きましょう」

台本に書かれた台詞を読み上げるかの如く、
絶妙に感情を込めた言葉を並べ、恭しく手の甲へと唇を寄せた。
何とも似合わない自分の行動に、彼女はどんな顔をするだろうか。
顔を上げれば戸惑いながらも自分を見つめ返す菫色の瞳。
ユノスは世辞にも営業用とも言えない、不気味さと陰鬱さを残した笑みを作る。

「どうぞ、これからも我等を御贔屓に」
「……ユノス、その、ものすごく似合わないよ?」
「ちっとは空気読めや」

眼前で可哀想だと言いたげな薄笑いを浮かべる少女の額に、
ユノスは条件反射の手刀を叩き込んだ。
ふみゃっ!と気の抜ける声を上げてエレインは額を撫でる。
先程までの凛とした「当主」は何処に行ったんだか、とユノスが溜め息をつくと、
エレインは普段通りの緩い口調のまま幼馴染みに微笑む。

「でも、ユノスは友達だもん。いつも通りでいいよ。その方が私も落ち着くし」
「いつも通り、ね。いつものお前ならそろそろ何かしら大ドジぶっこいて慌てふためいてるころだな」
「Σそ、そんなことないもん!私やれば出来る子!」
「どうだかな……お前本当にこういう場所向いてないわ。
 似合わねぇことしてないで、さっさと牧場に戻って馬の世話でもしたらどうだ?」
「うぅー……ユノスの意地悪ぅ」

少女の柔らかな表情にユノスは視線を逸らし、表面だけの悪態をつく。
それは素直になりきれない彼なりの愛情表現でもあるのだが、相手には些か伝わりにくい模様。
特に正直にお人好しを足して形を成したようなこの娘相手では
精一杯の好意もただの「意地悪」で片づけられてしまう。
頬を膨らませて、涙目のままのエレインを気まずそうにユノスは見ていた。
そして、使えそうな言葉を必死に脳裏から引っ張り出すと、

「……でもまあ、そのドレスだけは似合ってるよ」
「……ありがとユノス。お世辞でも嬉しいよ」

本人を直接誉めることもできない捻くれ者は目を合わせることなく最大の賛辞を告げる。
それでもふわりと、花綻ぶ様に笑う彼女に。
形容しがたい感情を胸に秘めて、ユノスは僅かに紅潮した頬を隠す様に顔をそむけた。
さて、ここまでの会話の最中。蚊帳の外へと放り出された男が一人、

「……なんだか私、完全に空気ですね。いやぁ随分と仲がよろしいようで。ラブラブですね」
「Σうわあああごごごごごめんなさいイアンさん!」
「Σらっ……!べっ、別に今のはそういうんじゃねぇだろ!」

空気を読んで二人の動向を見守っていたイアンが微笑ましそうに二人を見る。
すっかりと忘れていた存在が急浮上し、初々しいほどの動揺を見せる二人は
それぞれ全く異なる方面に恥ずかしがりながら慌てていた。


そこへ。


「おやおやこれは、皆様お揃いのようですな」

響く低く深みのある声。
談笑していた客人達が一瞬にして口を閉じ、そちらを見遣れば
術士服の老人が数人の使用人を連れてゆっくりと会場へと入ってきていた。
老人の奇怪な気配に気圧されたのか、客人達は自然と身を引き、
周囲を見渡しながらゆっくりと歩を進める老人の前に道を作ってゆく。
その姿を見て、ユノスは小さく舌を打つ。
老人も彼の存在に気付いたのか、視線だけを一度彼へ向けた後、
当主たる少女を前に暗い色を帯びた金の瞳を柔らかに細めた。

「いやはや――遅れて申し訳ない。レークス・ドゥムノニア、只今参上いたしました」




※ようやく登場。
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