蒼空

蓮華を見に行く。
なんでも色が変わる珍しい蓮華のようだ。

思えば花を愛でるという行為は久し振りだ。
いや、それどころか研究以外の外出自体が数年ぶりだ。
最期に出かけた思い出は、確か僕が9歳の頃だ。
父や母は僕にかまってくれなくて、姉さんは勉強に一生懸命。
ひとりでやることなんてもうなくなってしまうほど退屈だった時だ。

姉さんが、一緒に出かけようと言ってくれた。

僕が「お勉強は？忙しくないの？」と聞いたら、
姉さんは「お姉ちゃんだって、あー君と遊びたいわ」と笑ってた。
僕は嬉しくて、姉さんと手を繋いで出かけた。

連れてってもらったのは、シロツメクサの花畑。
姉さんはこの花が好きだった。
「ほら、見てあー君！この花はね、葉っぱがハートの形なのよ」
そう言って嬉しそうに笑っていた。
姉さんがそうやって笑う姿を見ていると、僕も嬉しくなる。
だから僕は姉さんにシロツメクサの冠を作ってあげたんだ。
姉さんはすごく喜んでくれて、

「ありがとうあー君。私、とっても嬉しいわ！」

最高の笑顔を見せてくれたんだ。

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思い出は何時だって、綺麗なままだ。
たとえそれが無情な冬の冷たさに覆われようとも。